最高裁判所第二小法廷 昭和52年(行ツ)34号 判決 1977年6月28日
神奈川県相模原市上鶴間三九三五番地
上告人
荒井五郎
神奈川県相模原市富士見六丁目四番一四号
被上告人
相模原税務署長
小林久二雄
右指定代理人
青木正存
右当時者間の東京高等裁判所昭和五一年(行コ)第四号所得税更正処分決定取消請求事件について、同裁判所が昭和五一年一二月七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について。
原審が確定した事実関係のもとにおいて、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 吉田豊 裁判官 本林譲 裁判官 栗本一夫)
(昭和五二年(行ツ)第三四号 上告人 荒井五郎)
上告人の上告理由
一、原判決は判決に影響を及ぼすべき重要な事項に付判断を遺脱している(民事訴訟法四二〇条一項九号、大高裁昭三二・一二・二四)
所得税法五一条二項・同法施行令一四一条により保証債務の履行にともなう損失について必要経費算入の認められる場合とは、当該保証を引受けるに至つた経緯、当該事業者と主たる債務者の関係、保証債務の金額、その成立時期等諸般の事情を総合判断し、当該保証の引受をすることが社会通念上当該事業の維持遂行のために客観的に必要または有益であると認められる場合をいうのだとすれば(第一審判決九頁目裏)、「経済的、社会的に同一性あるいは、同一の基盤に立つ二つの事業主体間において、その一つが他の一つのために保証をなすことは、特段の事情がないかぎり当然に事業の遂行上必要な行為といえる」ものである。
故に、左記事項の判断は、判決に影響を及ぼすこと明らかであるが、原審はこれらにつき判断を遺脱している。
記
(1) 上告人と訴外ハイ・ケミカル株式会社間に経済的社会的な同一性があるか否か、あるいは上告人と訴外会社とは経済的社会的に同一の基盤を有しているか否か。
昭和五〇年九月三〇日付上告人準備書面三、(三)、4。
昭和四八年一月三〇日付 〃 三。
(2) 右(1)の事項を判断するためには次の事項の判断が不可欠であるが、原審はこれらの事項についても判断を遺脱している。
イ、上告人は訴外会社のために何故保証をなしたか。
ロ、上告人は、訴外会社に何故金員を貸付けなければならなかつたか。
(イ、ロについて、代表取締役であつたからということだけでは理由にならない。代表取締役ならば必ず保証をなしたり、貸付をしたりするということではないからである。実質的理由が判断されるべきである。)
ハ、右ロ、の貸付金の金額及び財源。
ニ、訴外会社の倒産は上告人にいかなる影響を及ぼしたか(原審は、仮定の問題として判断を避けている。第一審判決一〇頁目表)。
ホ、訴外会社の規模。
二、原判決には、判決に影響を及ぼすこと明かなる法令の違背(法令適用の誤り)がある(民事訴訟法三九四条)。原判決は、所得税法五一条二項・同法施行令一四一条の適用にあたり、自ら認定した事実を無視し、且つ、前記一、のとおり重要事項の判断を遺脱して「上告人と訴外会社間に事業遂行上何らの関係もない」と断じ右法令の適用を誤つたものである。
以上